《第257回講演会》活動報告

テーマ『⾼分⼦の光分解』

第257回講演会
日時2024年1月18日(木)13:00~16:50
場所Zoomでのオンライン開催
テーマ『⾼分⼦の光分解』
⾼分⼦の光分解はエネルギー消費の低いクリーンな⾼分⼦処理法であることから、産業廃棄プラスチクス(廃プラ)よる地球環境汚染問題の有効な解決技術として期待される。今回、「⾼分⼦の光分解」の観点から、これに関連した最先端の研究について、マイクロプラスチクスの解析や、光分解性⾼分⼦の設計、⾼分⼦微粒⼦のリサイクル、さらに宇宙空間での⾼分⼦の劣化を中⼼に4名の先⽣⽅にご講演ただいた。講演会では、参加者との活発な議論を通して、これらの研究についての知⾒を深めることができた。
講演内容1. 「促進酸化法(AOP)を⽤いた海洋マイクロプラスチックモデルの作製と特性解析」⻑崎⼤学中⾕ 久之 氏
海洋マイクロプラスチック(MP)による地球環境汚染問題の解決には、海洋から回収した MP と同じ形状や特性を持つMP の⼈⼯モデルの作成が重要な役割を果たす。本講演会では、ポリマー型光触媒及び硫酸イオンラジカルを⽤いたAOP による MP の⼈⼯モデルの作成をご紹介いただいた。海⽔中、pH 制御下での硫酸イオンラジカルを⽤いて作成したPP、PS 及び PE の MP は、均⼀な劣化挙動かつ促進性を⽰し、このことにより、モデル MP の⼤量作製が可能になり、MP の化学的、物理的及び⽣物的な特性解析への道が開かれたことが例証された。
2.「ポリスチレン誘導体の光・熱分解 ―環境負荷低減を⽬指して―」⼤阪公⽴⼤学岡村 晴之 氏
熱および光で架橋する部位と解架橋する部位を有するスチレン誘導体の合成と重合について、光化学実験における基礎的な知識や⾼分⼦の評価法、さらに、光分解性⾼分⼦の応⽤研究に⾄るまで幅広くご講演いただいた。特に、透過性が⾼い近⾚外光を⽤いる⾼分⼦の光分解は、不透明材料への適⽤が可能になり、サーキュラーエコノミーの実現に展開できることが⽰された。
3.「⼒学的安定性と分解性を備えた⾼分⼦微粒⼦成型体」信州⼤学鈴⽊ ⼤介 氏
⾼分⼦微粒⼦を活⽤した新奇なマテリアルリサイクル⼿法についてご講演いただいた。メチルアクリレートからなる合成⾼分⼦微粒⼦は、微粒⼦の集合によって形成された強靭な微粒⼦フィルムを与える。このフィルムは溶媒に浸漬するだけで、⾼分⼦鎖の破断を伴うことなく、99%の⾼回収率で単⼀微粒⼦まで分解される。このマテリアルリサイクル法は、サステイナブルな循環型⾼分⼦材料としての可能性を秘めていることが⽰唆された。
4.「宇宙空間での紫外線による⾼分⼦劣化」宇宙航空研究開発機構⾏松 和輝 氏
宇宙環境での⾼分⼦材料の劣化や材料特性の変化について、地球環境との違いに基づいてご講演いただいた。宇宙環境では⾼分⼦材料の特性は、宇宙放射線や原⼦状酸素の影響を受け、さらに、地球上では⼤気の吸収によって存在しない 290nm 以下の波⻑領域の紫外線によって劣化が促進される。宇宙機の設計におけるポイントや地球上で⾏う宇宙環境曝露実験の紹介等を通して、宇宙環境下での⾼分⼦の劣化メカニズムについて知⾒を深めることができた。